「バビロン」感想 タランティーノにあってデミアン・チャゼルにないものってなーんだ?

 

はじめに

デミアン・チャゼル監督の最新作。3時間超えのスケールとブラット・ピット、マーゴット・ロビーら豪華スター集結と話題性はあるが、どうもイマイチいい評判を見てない印象があった本作。

 

ということでネタバレ込みで思ったことや感じたことを垂れ流していきたい。

(あらすじは公式サイトから見てね)

https://babylon-movie.jp/sp/

 

・良かった点 狂乱のハリウッドとトーキーへの変化

1920年代後半から1930年代前半にかけてのハリウッドでトーキー映画への変化に翻弄されていく人達を描いた本作。

1920年代末期ド派手なドラックパーティの裏には無茶苦茶な労働環境があった。その一方でいわゆるアメリカンドリーム的なチャンスの掴み方を夢見る人達で溢れている。しかし、1930年のトーキーへの変化によって求められる人材像が変わっていく。その中で3人の主人公達がどうチャンスを掴み、時代のうねりにどう立ち回っていき、翻弄されていくのか?とのかというのが大まかなお話の流れである。

あらすじの流れが白人のオスカーと揶揄された00年代ハリウッドから多様性などが重要視される今のハリウッドと共通しているのが非常に面白かった。そして、名もない若者がメンターを経て成長して破滅していくという流れはデミアン・チャゼル監督の得意技で、共感できる人も多いと思う。

恐らく今のハリウッドで1番F〇〇Kワードが似合う女優ことマーゴットロビーさん。今回も頭のネジがぶっ飛んでいたのが凄まじかったです。あとディエゴ・ガルバが演じる役が出世してツーブロックゴリラの見た目になってからゴリゴリに圧をかけまくる役になっていたの最高でした。デミアン・チャゼル監督の解像度の高いツーブロックゴリラ描写とメンヘラやべー女描写は必見!

この時は右の優しそうな青年が激ヤバツーブロックゴリラになるって思ってなかったよね…

 

あとは楽曲が最高。軽妙なトランペット最高!

・賛否両論ありそうな点 エログロのブレーキが壊れとる…

今作は過去の作品とは違って強烈なエロネタやグロネタを多数放り込んでおり、見ていてドン引きしていくことも多かった。見ていて衝撃的である(ここで脱落する人も少なからずいると思う)。ということで、「LALALAND」だけ見てこの映画を見ようと思わない方がいいかもしれない。最低でも「セッション」は見てほしい。間違いなく落差で耳がキーンってなります。

見るからに違う世界の人であるトビーマグワイアさん絡みのシーン、全部グロです…

・悪かった点 1920年代にポリコレを入れるな

今のハリウッド基準で1920年代を再現した結果、同性愛などのシーンに齟齬が多すぎるのがマイナス。同性愛とかそんな大っぴらじゃねーだろというツッコミ、どっかでしましたね?過去のハリウッドにポリコレを入れたところでタランティーノ監督のワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドに完敗しているって思ったのは僕だけではないはず。

 

あとはラストのシーン全般。なんでエヴァを見させられてるのよ俺は。ここもワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドに負けたと思ったところ。

・個人的に思ったこと 情熱と諦めの狭間で

筆者は「セッション」のインパクトに惹かれてデミアン・チャゼル監督の作品を見るようになった。しかし、今作はあの「セッション」や「LALALAND」のような燃え盛るようなエネルギーが感じられなかったというのが率直な感想である。

あのラストの映画館のシーンで大きなものの一部になれなかったことに対する想いは共感できるという気持ちとデミアン・チャゼル監督も我々と同じく何かを諦めたのかという悲しみの気持ちが共存してなんとも言えない感情になった。その諦めの気持ちはトラブルでムーンライトにアカデミー賞作品賞を奪われたあの一件(下記リンク参照)のせいなのかと勘繰ってしまう。が、それは本人にしかわからないのだろう…

 

https://cinefil.tokyo/_amp/_ct/17046374

 

何かに対する情熱を持ち続けるのは何よりも難しいことなのではないか?その挫折感を強く感じてしまった。ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのような希望を感じられないのも辛い

タランティーノ監督やスピルバーグ監督にあってデミアン・チャゼル監督にないものはそこかもしれない。

・終わりに

映画に対する愛憎入り混じった想いになっているデミアン・チャゼル監督の次回作はどうなるのか。今から気になって仕方ない。できれば異世界転生モノのような振り切ったものを作ってほしい。