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はじめに
北野武監督の最新作は時代劇。本能寺の変を新しい解釈で描く作品である。
やはりポスターにもあるように戦国アウトレイジに近い話になりそうな感じがしたのだ。が、映画を見てその印象はガラッと変わってしまった。
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時代劇を笑い飛ばす
実際は秀吉、秀頼、黒田官兵衛がシニカルな時代劇を笑い飛ばすコメディ要素が強く出た作風だった。パンフレットの中でも監督が「時代劇ってさ、ホントの時代を映したもんじゃないよね?もっと血生臭いよ」というようなニュアンスの発言をしているように、従来の時代劇って滑稽だ。という話をショートコントを畳み掛けるような作風で描いていた。
それが強く出てたなと感じたのが家康の伊賀越え。大河ドラマなどで家康の三大危機として描かれる伊賀越えだが、この映画では追っ手に追われながら服部半蔵(桐谷健太だったのビックリした)が淡々と処理し、影武者が死んだら「変わって」というようなあっさりしたものだった。そのシニカルさは真田丸のコント伊賀越えを見た筆者のツボに入ってしまった
ハラキリを長いよ!と突っ込むシーンやラストの光秀の首を見分けるシーンなど随所に「コメディアンの巨匠ビートたけしが見たここが変だよ時代劇」を散りばめていて笑ってしまった。KADOKAWAと東宝の広報担当は泣いていい
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自分の土俵に持ってくるための型破り
この作品のキモになるのは型破りの正しい理解だと思う。
https://togetter.com/li/1600090
これは市川猿之助がテレビで語っていた型破りと型無しの違いについての話だ。
「型を学んでから破るのご型破り。型を学ばず新しいことをやろうとするのが型無し。」
これを踏まえてこの映画を見ると更に味わい深い。
パンフレットの中でも大河ドラマとかを見てきて「なんか違うぞ?」というものがあったのがこの作品の出発点だと語っている。つまり、しっかりと時代劇という型を学んで「こんなものにマジになってどーすんの?」と破っているから面白いのだ。
自分の土俵である「笑い」に時代劇を寄せて従来の時代劇を破る。このおかしさで満足できると思う。
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細かいところ
・BL要素強かったね!西島秀俊と遠藤憲一のBLがあるだなんて…
・近年の研究成果なんて知らん!と言わんばかりのテンプレ気狂い織田信長
・頭のネジが吹き飛んでる加瀬亮さんから漂うSPECの匂い
・森蘭丸を犯す信長で笑いそうになった
・アマレス兄弟めっちゃ重要なポジでビックリした
・アクションの多くがニンジャバトルだった。ワザマエ!
・わずか数分の出番だけど強烈なインパクトを残した柴田理恵大先生。もっと色んな映画に出てほしい
・ちゃんと格の高いような人だったのが千利休と家康だけだった。
・実質もう1人の主人公だった農民から出世した武士の役をやる中村獅童。とにかく走り回って泥に塗れてかわいそうだった。最後に光秀の首を貰えたところで名もなき農民兵に殺されるの因果応報感もあり報われなかったな…
・中国大返しの三文芝居はズルい
・ビートたけし、大森南朋、浅野忠信の3人でコント番組に出れるよ
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さいごに
面白かったけど、人がバンバン死ぬのでグロいの苦手な人は気をつけて。あとこれだけは言っておきたい。
たけしさんから「面白いこと言ってみろ」と2〜3回詰められたキム兄の心労が心配です!